Home > Arquitetura - 建築 > サンパウロはマニラやジャカルタ、ラゴスのようだ

サンパウロはマニラやジャカルタ、ラゴスのようだ

  • 2011.11.04 01:05 AM

と言ったのは、先月末サンパウロへ9年ぶりにやって来た世界一忙しい建築家、
レム・コールハース(Rem Koolhaas)氏です。

(ずっとアップしたものと思ってていつの間にか2ヶ月も経ってしまいました・・・。)

110908_01.jpg

ブラジルでも大きな本屋では普通に彼の名著「S・M・L・XL」などは置いてありますし、
彼を一躍有名にさせることになった著書「錯綜するニューヨーク」のポルトガル語版が発売されるなど、
彼の存在自体はこちらの建築・都市計画関係者にはメジャーです。

サンパウロで開かれたたった1度の講演会は、平日の11時からという時間にもかかわらず
会場となったSESC Pompeiaは超満員だったそうです。
僕は残念ながら仕事で行けなかったので現場レポートではないのですが、
もうかれこれ10年前くらいに青山のTNProbeで聞いたコールハース氏の講演が特に印象深かったので、
今回はオフィシャルになったコメントなどを紹介させてもらいます。

さて、今回の彼のブラジル入りの目的は、
ブラジルの建築家リナ・ボ・バルディ女史(Lina Bo Bardi)の代表作Casa de Vidro(ガラスの家)で
来年から開催される展覧会のリリースのためにやって来たそうです。

110908_02.jpg

コールハース氏とはよく親交のある著名なキュレーター、
ハンス=ウルリッヒ・オブリスト(Hans Ulrich Obrist)氏のキュレーションにより、
世界各国のアーティストや建築家が招待され、ガラスの家の中に作品を展示するという内容だとか。
そういえば、現在東京の森美術館で行われている「メタボリズムの未来都市展」で
オブリスト氏はコールハース氏と共著で『Project Japan: Metabolism Talks...』という書籍を出しているようですね。
(それにそても、この展覧会はぜひ行ってみたかった・・・)

コールハース氏はその代表として今回招聘されたわけですが、他の招待作家としては、、、
っていうか、まだほとんど決まっていないらしいですが、笑
ブラジル人建築家でPritzker賞を受賞したパウロ・メンデス・ダ・ホーシャ(Paulo Mendes da Rocha)氏、
世界的に有名なブラジル人アーティスト、エルネスト・ネト(Ernesto Neto)氏等のほか、
日本からは妹島さんと西沢さんのSANAAが出展することは決まっているようです。

そうそうたる面子になりそうですが、来年没後20年になるリナさんをオマージュしてのことでしょうね。

110908_03.jpg

ちょっと話題が沿れてしまいましたが、
では、講演で発せられたコールハース語録@サンパウロを並べてみましょう。

「空腹の建築家として始まり、(皮肉をこめて)スター建築家となり、将来はリタイア建築家となるこの人生」
「貧困状態はキャリアを始める上で重要だった。」
講演は彼の建築家としての人生を辿る話が主だったようで、建築家としてキャリアをスタートさせた時が
戦後のロッテルダムだったことが彼にとって大きなチャンスだったと言っていたようです。

「建築に興味を抱いたきっかけの一つが、子供の頃に見たTIME誌に掲載されていた
ブラジリアの建築群の写真だった」
コールハースとブラジリアって・・・。笑
おそらく彼のことですから、デザイン云々の話ではなく、ブラジリアという都市全体に関わる政治性などを
含めたよりマクロな視点で眺めていたんだろうと思いますが、これはちょっと意外ですね。
もしかしたら彼のビッグネスという概念は1950年代のブラジリアから生まれたのか?
うーん、これは突き詰めてみると面白いかもしれないです。なんか臭ってきます。

さ、次、いきましょう。

110908_04.jpg

「Sao Vitoが取り壊されたのは非常に残念だった。」

Sao Vitoとは"Favela Vertical(垂直型ファヴェーラ。ファヴェーラ=不法占拠地区)"とも呼ばれた
25階建ての建物、サン・ビト(Edificio Sao Vito)のことです。
(左が建物全景。右がファサードの拡大写真。無数のルーバーの間にpixaçãoと呼ばれる
象形文字チックなグラフィティが印された建物。)

50年代末にワンルーム主体のプランで建てられた中流層向けの都市型マンションでしたが、
70年代から住人の多くが闇商人や娼婦で構成されるようになり、
80年代からは管理組合の崩壊により水道が止められごみ収集もなくなったことで廃墟化。

25階建ての立派なランドマーク的な佇まいにもかかわらず不法滞在者の住処になっていた
知る人ぞ知る世界的に有名な建物です。

コールハースは2002年、ARTE/CIDADEというサンパウロの都市プロジェクトに招聘され、
この建物の改修計画を提案していましたが、今年の5月に完全に取り壊され、
本人はそれを非常に残念がっていたそうです。

・・・この取り壊しについては、僕もまったくの同感です。
サン・ビトと同じようにモダニズム建築を具現化したプルーイット・アイゴーという団地が
アメリカのセントルイスにもありました。
この団地もスラム化して犯罪の温床となり、1972年に爆破解体された建物でした。



チャールズ・ジェンクスがこのプルーイット・アイゴー団地の爆破をもってをモダニズム建築の終焉と言いましたが、
サンパウロのこのサン・ビトは都市型1Kマンション(nLDK型マンション)の行く末。
いずれ東京のような大都市にだってこんな風景が広がるかもしれませんよ。
ま、この建物についてはまた別の機会にでも・・・

ちなみにひとつだけ、、、
ブラジル人の間では、このSao Vitoは"Treme,Treme"という可愛い名称もありました。
Treme=揺れる。勘のいい方は既に気づくと思いますが、
娼婦が多いビルだったためビル全体が絶え間なく揺れているということで、この愛称がつけられたようです。
さすがブラジル人。ネーミングセンス抜群。。

*
さて、コールハースネタに話を戻して・・・

「今私は世界中の都市よりも地方(田舎)に目が向いている。人々が地方を離れて都市に集まることで
一体何を置いてきてしまったのか、それが今の分析対象だ。」
この発言は意味深です。
自身の設計事務所OMAと同様、自身がもつシンクタンクAMOで20年以上世界中の都市を分析し続けてきた彼です。
無比のリアリストとして、また、果敢に世界中の都市で現実を浮き上がらせる建築を
作り続けてきた一人の建築家ですら、
爆発的に成長を続ける都市には対峙できなかったということなんでしょうか・・・。
それともポジティブに地方に目が向いているのか。

110908_05.jpg

「私は理性的なので、印象で物事は言わないが、
サンパウロはフィリピンのマニラやインドネシアのジャカルタ、ナイジェリアのラゴスのようだ。」

講演の最後に会場からの質問で、「サンパウロについてどう思われますか?」という問いに対して、
コールハース氏はそう答えたそうです。

南半球最大の都市サンパウロについて今まで彼が見てこなかったはずはないので、
要はサンパウロは特異な都市ではなく他の巨大都市と似通った都市のひとつ、
言ってしまえば、一つの巨大都市の典型例であって、取るに値しないということなんでしょう。

現に最近発表された統計では、サンパウロ市に住む住民の46%はサンパウロ州外、および外国人であり、
サンパウロ市の約半分くは流入者によって形成されているのが現実です。
また、最近の不動産の傾向としてはサンパウロの中心部は地価が高騰し過ぎて、益々ドーナツ化減少が進んでいて、
サンパウロ市から車で1時間程度離れた地方都市のマンションが飛ぶように売れていると耳にします。
事実、会社の同僚たちの平均的な通勤時間は1時間半から2時間です。

コールハースさん、サンパウロの今後はいかがですか?
と、ブルータス的質問をさらに投げかけたいところでしたが、視聴できなくて残念でした。
いずれにしても、9年ぶりのコールハース氏のサンパウロ来訪は、ブラジル国内でも
まだ様々な分野で波紋を呼びそうです。

急速に成長を続けるサンパウロに住む一人として、
この都市がコールハース氏がいうとのころの、「大量生産の爆発とインフラストラクチャーの複雑化、
そしてひとつのブラックボックスとなる」、かどうか、しっかり体験してみたいと思います。

参考サイト:
http://www.estadao.com.br/noticias/impresso,sp-parece-jacarta-e-lagos-diz-koolhaas,763931,0.htm
http://casaeimoveis.uol.com.br/ultimas-noticias/redacao/2011/08/25/arquiteto-holandes-rem-koolhaas-lamenta-demolicao-do-sao-vito-e-compara-sao-paulo-a-lagos-na-nigeria.jhtm
http://www.piniweb.com.br/construcao/arquitetura/koolhaas-em-sao-paulo-agora-volto-os-olhos-para-o-227787-1.asp
http://blog.arthurcasas.com/cultura/rem-koolhaas-sesc-pompeia

Comments:0

 (必須)
 (必須)※一般には公開されません。

Trackbacks:0

TrackBack URL for this entry
http://brasildesign.org/re-dekassegui/mt-tb.cgi/53

page top